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「すみません、
行ったことある場所なのに、
わざわざお迎えに
来ていただいて」
少し走っただけで
息を切らしながら言うと、
白井さんはにっこり笑った。
「いいよ、どっちにしても
迎えに来るつもりだったから」
白井さんが歩き出したので、
その後に続く。
「お勉強、お疲れさん。
毎日の塾通い、頑張ってるね」
「…受験生ですから…。
それに、塾に行ってないと
不安だっていうのもあるんです。
行っただけで安心しちゃうから
危険なんですけど」
「はは、なるほどね」
金網の向こうを、
わたしが乗ってきた電車が
ゆっくりとスピードを上げながら
追い越して行く。
電車が去ってから、白井さんが
思いだしたように口を開いた。
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