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『鍵は取り上げられちゃってるし、 訪ねて行っても、部屋に 上げてくれないし…』 白井さんは今、レナさんの方が 自分を拒絶してるみたいに言ったけど。 …ホントは逆なんだよね…。 わたしはレナさんの気持ちを想い、 小さくため息をついた。 …辛いだろうな、 …好きな人に冷たく されちゃうなんて…。 想像するだけで、 なんだかとても 悲しい気持ちになって来る。 レナさんのためにも、 もちろん、白井さんのためにも、 …この作戦、絶対に 成功させなくちゃ…。 「…萌ちゃん。 …おーい、萌ちゃん」 後ろから声をかけられ、 振り返ると、 立ち止った白井さんが 不思議そうな顔をして こちらを見ていた。 「どしたの、ぼーっとして。 …着いたよ、仕事場」 白井さんが指差す マンションを見上げると、 一番上の部屋の窓が 沈んで行く夕日を反射して、 わたしの目を射た。
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