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「…仲良しですね…」
白い写真立ての中には、
中学生位の可愛い女の子が、
白井さんの背中に抱きついて、
肩に顔を乗せて笑っている
スナップ写真が入っていた。
今より少しだけ若い
白井さんのデレデレ顔に、
つられて笑みが浮かぶ。
そして、――鼻の奥がツンと
痛くなって、涙が滲んだ。
……やっと、美雪さんの写真を
飾れるようになったんだ…。
閉じ込めておくことしか
出来なかった思い出を、
…白井さんは、今、こうして
箱の中から取り出すことが出来た。
きっと、まだ
心の痛みは続いている。
でも、ここに美雪さんの
写真を飾ることは、
…後ろを向いていた身体を
前に向け直し、歩き出すことと
等しいような気がする。
「ケーキ、食べようか」
「はい…わたし、紅茶淹れますね」
わたしは涙を指先で拭って、
写真立てを元の位置に戻した。
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