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止まらない鼓動の速さに、体がどうにかなりそうだってこの時すでに思ったけど……これは序盤だったとこの後知ることになる。
優しい口づけの後、手の平が、指先が、唇が私の体の至るところを触れて回って、身体が熱くなって止まらない。
こんなの知らないって何度も思って、熱に浮かされたみたいに意識がぽわんぽわんする。
自分でも触れたことのない部分に手を伸ばされると、恥ずかしさで死ぬって思っていたのに、刻也さんの手がまたいたずらにうごめいて止まってくれないから、私はあられもない声を上げてばかりだ。
間に何度もキスをして、何度も肌に触れているうちに、もっとくっつけたらいいのにって気持ちが湧きあがってくる。
こうやって、人は交わっていくのかもしれない……何て思っていたら、いくぞ、って言われてこくんと頷いた。
「い、っ……た」
想像以上の痛みと重みに、涙が滲む。
ぼやける視界に映るのは刻也さんだけで、私に痛みを与える人だけれどたまらなく愛しい。
「ゴメンな、萌優。……愛してるよ」
囁かれた言葉と彼の熱さにくらくらしながら、私はようやく彼と心も身体も繋がった。
そして、やっぱり心に想うのは「大好き、です」って、ただその気持ちだけ。
抱きしめたい衝動にストップをかける必要はもうない。
腕を背中に回してギュウっと抱きしめるとより彼を感じて、ただこの人の傍にずっと居たいと思った。
これから先彼を抱きしめるのは、どうか私だけにして――そう願いながら、私は意識を手放した。
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