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「なんですか?」
「1年前の今日、何してたか知ってるか?」
「1年前? いや、さすがに分かんないです」
「ククッ……だと思った」
笑いながら私を引き寄せて、後ろから抱きしめる。
ワンピースの裾がひらりと揺れて、ふわりと風が足を通っていくのが気持ちいい。
「覚えてるんですか?」
「覚えてるよ」
斜め上を見上げて尋ねると、誇らしげな顔をした刻也さんから返事が返ってきた。
1年前?
6月……
うーん、総務に馴染んできて、会社妻とまで呼ばれた当たりかな?
しかし本当に妻になるだなんて、みんなびっくりしてたな……なんて思いながら、皆の驚きの表情を思いだしてくすっと笑う。
「え、そんなにおもしろいことあったか?」
「いえっ。会社妻じゃなくて、ほんとに妻になったらみんな驚いてたなーって思って」
「そっちかよ」
「ごめんなさい。脱線しちゃって」
ぺろりと舌を出すと、はぁーっとため息を吐かれた。
「いいよ。苦労するのは分かってたから」
なんて笑いながら言われた。
「く、苦労って、そんなにっ」
「いーの。お前はそのまんまで」
「もぉー、そんなことないのに」
ぷ、と頬をふくらますと指先を頬に刺されて潰される。
潰された頬に、ちゅっとキスをされればそれで満足してしまうんだから、私ってどうしようもなく刻也さんに転がされている気がする。
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