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「一年前の今日。萌優が初めて家に来た日、だよ」
「え?」
「俺の誕生日。萌優、俺の横に居た」
「嘘!?」
「ホント」
ニヤッと笑うその顔に戸惑う。
だって、あの日は本当にたまたま一緒だった。
海人さんが事故に遭って、それで病院に駆けつけたら実はトキ兄は自分の上司だって分かって。
初恋の人なのに、また上司の刻也さんに惹かれてしまって……なんて。
そんな、あの日が一年前の今日!?
「ケーキ、美味かった」
「まさか、あの……!?」
「そうそう。すし屋の」
「知ってたら、もっとちゃんとしたの用意したのに」
「いいんだってば、あれで」
またもクスクス笑う彼とは対照的に、私の表情は曇る。
「ごめんなさい。気づかなくて」
「いいよ。三十路の誕生日なんてわざわざ言わないから」
左腕を私の腰に回しながら、頭を撫でてくれる。
その手の温もりが心地よくて、ついつい力を抜いて体を後ろに預けてしまった。
そうするとさらにぎゅっと抱きしめられる。
「あの日すごく近くに萌優を感じて、初めて俺の目にお前が女に映った。そしたらもう止められなくなってた。でもどうしたらいいんだって、ずっと悩んでたよ。
本当は……もっと前から、お前に惹かれてた気がするけどな」
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