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そうすると、少しずつ私の顔に近づいてくる刻也さんの顔。
私の頬の近くに彼の頬が触れそうなくらい近い距離に来る。
熱を感じるその距離に堪らなくなって、身体の奥がまたゾクリと震える。
顎から離した手が、私の背後にあるソファーの背もたれに置かれた。
それだけで体まで密着するように近い。
それでも触れない距離に、いっそ抱きしめられた方が恥ずかしくないとまで思えた。
――この距離が堪らなく私を刺激する。
そしてゆっくりと確認するように、刻也さんは私の耳に囁く。
「萌優。今日でプティキャラは終わりだな?」って。
絶対に、絶対に私が刻也さんの声に弱いって知っていてやってるとしか思えない。
分かりやすく震えながら、私の顔はまた急上昇で熱くなる。
「萌優?」
もう何度目か分からないその呼びかけに、かすれ声で『はい』と返事をした。
「もう待たないぞ? いいのか、逃げなくて」
なんてクツクツ笑いながら言う。
そんなところがすっごく意地悪だ。
「に、逃がす気、ない、くせに」
俯きながら恥ずかしさでおかしくなりそうで、きゅうと膝上に置いた手を握りしめた。
そうしたらやっぱり意地悪な彼は、人の悪そうな笑みを浮かべて私の顔をしゃがんで覗き込んできた。
そのまま私をじっと見上げると、私を無言で見つめたまま止まる。
今度は逸らさずにその視線を受け止めると、近づいてくるのを感じながらも抵抗できずに目を閉じた。
「悪いけど、今日は全部もらうから」
「悪いなんて、思ってな……っ、んん――ッ」
唇を合わせながら私はソファーに押し倒された。
ねじ込まれた舌先が、私の口内を深く浸食して息苦しくなる。
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