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眩暈がしそうなほどの勢いに、酸素が足りなくて苦しさをバシバシ肩口を叩いて伝える。
「ふ、ぁ……と、ときなり、さ」「まだ」
一瞬だけ離れた唇は呆気なくまたくっついて、彼の唇はまた私の唇を食べる。
「あ……っ」
やっぱり彼の指先は時々いたずらが得意だ。
あ、と思った時にはすでに遅くて、いつの間にやら私のセーターの中にその手ごと滑り込んでいた。
いつもながら、いつの間に? と思ってしまうほどの鮮やかさ。
その手慣れた感じに些か不満を抱きながら、すっかり慣らされてしまった甘いキスに思考が薄らいでしまっていた。
――まさか、このまま!?
焦るけれど、私は背後の背もたれと、圧し掛かるように私を制圧する刻也さんの重みとで逃げる余地がない。
プチン
またしても鮮やかに、私の胸を締め付けるものが外されて、私はさらに赤面する。
「ま、まって!」
「やだ」
「だ、だってココ……っ、ん、ぁっ」
「待てない」
随分待たせてしまったことは分かってる。
2週間前、あんな形で中途半端に終わらせてしまって、彼に変な火をつけた。
それでなくても付き合い始めて5か月が経っている。
この年で付き合い始めていくらなんでも遅すぎるって、ツッコまれても仕方ないって自分でも自覚してた。
でも、やっぱり……
力で抑え込まれたら到底勝てないのは百も承知だけど、このままここで流されるわけにもいかないって気持ちが働いて、私の全力を持って、刻也さんの体を押して離そうとした。
でもわざとらしく体重を掛ける彼は、もう顔がいつもの補佐の面影もないほど男の顔をしている。
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