第1話

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同じクラスの松本冬哉は書記をしている。 机を挟んで冬哉の前に立つのは同じく同じクラスの梅本秋穂。 彼女は生徒会長だ。 自ら手を上げ立候補した。 クラスのみんなは何も言わず、拍手した。 それと同時に彼女は冬哉を書記へと推薦した。 この時もクラスのみんなは何も言わずに盛大な拍手を送った。 二人は押しも押されもしないクラスの人気者だ。 二人は、机の上に置かれたノートらしきものに何か書き入れながら、顔を見合わせている。 誰かが冗談でも言ったのだろうか? 二人はお互いを見つめ合いながら笑い合った。 しばらくすると秋穂が冬哉の前からいなくなった。 冬哉は前を見たまま器用に手のひらでペン回しを始めた。 何か考え事をしている時の仕草だ。 テストの最中よく見かける。 秋穂が冬哉の前に帰ってきた。 冬哉はやさしく微笑んで、またノートに何かを書き込み始めた。 「……」  春菜はそのうつむき加減の横顔に見惚れて、本を落としそうになった。 (危ない、危ない)
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