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静まり返った図書室を見渡した。
幸い、今の自分を見ている者は誰もいなかった。
同じ教室では彼の横顔さえ見ることができない小心者。
春菜の行為は一種のストーカーまがいのノゾキに過ぎない。
カムフラージュに慌てて小説に目を向ける。
先ほどから1ページも進んでいないのは、冬哉を見ていたからだ。
小説みたいな恋愛なんて出来っこない。
見ているだけで十分だと、もう一度、冬哉の横顔に眼を向ける。
この距離が三メートルほどなら……
遥か遠くに見える冬哉を見つめながらため息を付いた。
昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
いつも通り席を立って、自分の教室に戻る支度を始める。
ここまではいつも通りだった。
いつもの澄ましたストーカー女だった。
そう、ここまでは……
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