第1話

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静まり返った図書室を見渡した。 幸い、今の自分を見ている者は誰もいなかった。 同じ教室では彼の横顔さえ見ることができない小心者。 春菜の行為は一種のストーカーまがいのノゾキに過ぎない。 カムフラージュに慌てて小説に目を向ける。 先ほどから1ページも進んでいないのは、冬哉を見ていたからだ。 小説みたいな恋愛なんて出来っこない。 見ているだけで十分だと、もう一度、冬哉の横顔に眼を向ける。 この距離が三メートルほどなら…… 遥か遠くに見える冬哉を見つめながらため息を付いた。 昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。 いつも通り席を立って、自分の教室に戻る支度を始める。 ここまではいつも通りだった。 いつもの澄ましたストーカー女だった。 そう、ここまでは……
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