第1話

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自分の教室に向かう途中にある渡り廊下をいつものようにのんびり歩いた。 中庭に植えられたピンク色のサツキが五月の日差しを浴びて、目がくらみそうになる。 あのキレ者集団たちが集まる教室へと向かう足取りはいつも重い。 この気分は朝、登校するときの重苦しい気分と同じだった。 無理して希望した国公立、有名私立大学進学クラス。 明らかに落ちこぼれの自分がいた。 足どりが重い。 授業開始時間ギリギリで人気のなくなったこの渡り廊下を歩いていると、前からものすごい勢いで走ってくる長身の男子生徒とすれ違った。 ドタバタと走る風圧で小柄な春菜は吹き飛ばされそうになり、よろめいてしまった。
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