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「とにかくアリスの傍にそんなものは必要ないわ」
女王さまがキッとチェシャ猫を睨み付ける。
「ねぇアリス?」
優しい声で女王さまが私に言う。
私はチェシャ猫をぎゅっと抱く。
私は答えられなかった。
「アリスが困っていますよ。陛下」
背後からの声に私は振り向いた。
そこにいたのは物静かな雰囲気の持ち主。
私は少しほっとした。
「お帰りなさい。私たちのアリス」
「ビル…」
女王さまが少しむっとなる。
「アリスは困ってなんかいないわ」
「アリスは優しい。私たちの中の誰であろうと傷付けたくないはずです。だから困ってしまいますよ」
静かにぴしゃりとビルは言い切った。
女王さまはただ黙っていた。
「アリス、心配しなくても大丈夫です。だからそんな顔はやめてください」
私はそこで初めて泣きそうな顔になっていたことに気がついた。
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