ふたたび

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「アリス、ナクのは良くないよ」 チェシャ猫が言った。 でも…何だか心がもやもやする。 分からない何かが、私を不安にさせてる。 「大丈夫ですか?アリス」 「アリス、わたくしはアリスが大事なの」 「泣くなよ。アリス」 「泣かな…いで…アリス…」 私はボロボロと大粒の涙を流していた。 ここは優しい国。私だけのみんな。 「うっ…っく…」 思わず喉から声がもれた。 「アリス。泣かないでアリス」 女王さまが私の手をとった。 涙が拭えない私の顔は涙でぐしゃぐしゃになってるに違いない。 「わたくし…アリスが泣くなら猫を預けろなんて言わない。だから泣かないでアリス」 「ちが…っ…うの…っ」 しゃくりあげながら話す私の声は震えていた。 上手く話せない。 「違う…っ女王…さまの…せいじゃな…いの…」 私は首を振った。 本当に女王さまのせいじゃない。 でも何で涙が…? 「アリス」 チェシャ猫が私の腕の中から私を見上げる。 フードの中は相変わらずの闇。 「帰ろう」 「…え?」 「帰ろう」 そこで私の意識はプツ、と途絶えた。
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