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「お帰り。僕のアリス」
三日月の口がいつものように私を迎えた。
そして私も、
「ただいま。チェシャ猫」
「お帰り。僕の亜莉子ちゃん」
第三の声。
私は声の主を振り返り、笑顔を向ける。
実際、その笑顔は引き攣ってるんだろうな。
顔の筋肉が違和感を訴えてるのがその証拠。
「…ただいま。た…武村さん」
「やだな。武村さん、だなんて。正晴でいいんだよ。まぁ、亜莉子ちゃんらしいけどね」
にっこりと笑顔が返る。
こっちはまったく引き攣った様子はない。
「亜莉子ちゃん、明日は暇かい?」
「いいえ。予定はいっぱいです」
間髪入れず、私は答えた。
そしてチェシャ猫の首を抱え、さっさと『私の部屋』に向かった。
「亜莉子ちゃん!」
背中にかかる私を呼び止める声。
お構いなしに部屋に飛び込む。
そして、ホームセンターで買った2番目に安かった鍵を部屋の内側からしっかりとかけた。
これは条件なのだ。
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