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「あっ!アリス」
「帽子屋…ネムリネズミも…」
帽子屋が頭にネムリネズミを乗せて、よたよた近づいてきた。
「お…帰り…僕…らのアリ…ス…」
相変わらず眠たそうにネムリネズミは言った。
「うるさいと思ったらやっぱりこの二人か…。飽きないよなー」
私は帽子屋の大きな大きなシルクハットをポンポンと叩いてみた。
「なっ!いきなりなんだよアリス!帽子、触るなよ…」
驚いた帽子屋が慌ててシルクハットを直すと、上に乗ったネムリネズミがズルズル落ちていく。
私はネムリネズミをシルクハットにしっかり乗せた。
「ごめんね。つい…」
私は何故か急に胸が苦しくなった。
腕の中の猫がもぞっと動くのにハッとする。
「駄目よ?チェシャ猫」
「…僕のアリス。君が望むなら」
駄目。
私はこの私を傷付けない世界を…また歪ませていく。
それだけはしちゃいけない。
けれど、本当に急に切なさが押し寄せて来た。
みんなが、また私を心配してる。
凄く凄く嬉しいのに…。
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