――赤色の紙

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 少し肌寒い秋の日。山は美しい紅に染まり、イチョウの木が立ち並ぶ道では、下一面に敷き詰められた黄色の絨毯のように華やかで、感傷にも浸りやすいこの季節。    そんな感慨深い季節とは裏腹に、賑(ニギ)やかな夜の繁華街。  仕事に疲れた大人たちが、そこでワイワイと子供のように仕事のストレスを忘れて騒いでいる。  深夜になってもこの活気が衰えることを知らず、あちこちで照らされる看板の光がアスファルトを照らし、とても今が夜だとは感じさせない活気溢れた街であった。    そんな大人達が集まる夜の街に、一際(ヒトキワ)眩しく点滅して、長く見つめていると目を悪くしそうなネオンライトの看板、それを斜めに掛けたカラオケ店。そこの店の一番奥の一室で、美しい歌声を響かせる16歳の青年がいた。  その青年の名は皆咲ユウ(ミナザキ ユウ)。  そしてユウと同じ部屋で、拍手の合いの手を入れながら、この美しい歌声に聞き入っている同じ歳ぐらいの高校生が三人。  ユウと小学生からの親友の北風ハルキ(キタカゼ ハルキ)。  先月晴れてハルキと付き合うことになった山野くるみ(ヤマノ クルミ)。  そしてハルキと同じく小学生から同じの新垣みかん(アラガキ ミカン)。    この4人は、中学の頃からずっと一緒だった。4人一緒に海に出かけたり、テスト週間に勉強会を開いたり、水族館に出かけてみたり、今こうしてカラオケに行ってみたり。高校も4人一緒に上位校の学校に進学。勉強会でみかんの熱ーい指導を受けたおかげで、4人全員頭が良い。そして誰から見ても最高に仲の良い4人だった。
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