――赤色の紙

3/12
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
「やっぱり良い声してんなぁ、ユウ。つい聞き惚れてしまったぜ。同性愛に目覚めてしまったらどうしよう。やっぱり俺……いや、ワタシが女役になるのかしら?」  ハルキが首を傾げてユウに聞いた。そして机の上にある2本目のマイクを取ると、両手を口に当ててぶりっ子らしいポーズをとる。 「なら次はワタシがAK◯48を、本人に負けないように可愛く歌いまぁす」  ユウはマイクをぶらんと手に下げて唖然としていた。 「相変わらず全力運転で気持ち悪いなぁ、ハルキは……」 「私というものがありながらユウに惚れるなんてキッーー!悔しい……」  ソファで座っているくるみはどこから取り出してきたのか、ハンカチを噛んで引き裂かんばかりに伸ばしていた。 「いつものくるみじゃない……」  みかんは顔を真っ青にして、隣にいたくるみと上半身だけ距離を取る。    そんなどこにでもあるような平和で笑いの絶えない会話がルーム全体に響く。  今日も相変わらず微笑ましい4人。この平和がいつまでも続くと皆思っていた。まさかこの平和がいとも簡単に崩れ去ろうなんて、どこの誰も思わないだろう。    そう、誰も思わない。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!