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喧騒に紛れて、不意に耳を掠めた、低い声。
“蓮だっ”
と思った時には、バスを降りる人の波に飲まれていた。
「れ、」
地面に足を着けてから振り返ると、蓮はもう私に背中を向けている。
な、何、さっきの……?
“近づかない方がいい” って、意味が分かんない。
っていうか。
近づいて来たのは、どっちなんだか!
心の中で文句を言い返した時には
「あ、」
もう発進していた、バス。
「いったい、なんなの、っ…」
結局、蓮の言葉の意味が分からないまま
そのうちバスは、見えなくなった。
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