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「あ、いえ、織田さんの彼氏が、黒崎先輩だったなんて知らなくてっ、」
いち早く答えたのは、飯沢さんだった。
「そうだったんですかっ」
両手を前に出して「どうぞ、どうぞ」なんて。
……ほんと、意味が分かんない。
「じゃ、私はこれでね、織田さん」
急に態度を変えた飯沢さんが、そそくさと去っていく。
……なんだ、あれは。
黒崎先輩に、並じゃないオーラを感じたのかもしれないけど。
あの飯沢さんが怯んでくれて助かった。
と、思っていたら。
「嘘っ、先輩に彼女ができたなんて…」
黒崎先輩に告白した彼女は、信じられないというように、
「フリーだって聞いたのに……」
涙を浮かべながら、友達と一緒に去って行く。
…………。
そんな彼女たちの背中を見ているうちに。
「──あ、」
私は、ようやく正気に戻った。
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