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───…
「うっ…」
ほぼ満員に近いバスは、走り出すと揺れに揺れる。
酔いそうなくらい。
「なに? バス酔いしちゃったの?」
隣に立っている虎太郎が、話しかけてきた。
ていうか。
お願いだから、今はそっとしておいて欲しい。
「気分悪いなら一緒に降りようか?俺が」
私の顔をのぞき込んでくる、虎太郎。
「……いいです、大丈夫だし…」
黙っていれば、なかなかカッコいい男なのに。
口で損をしていると思う。
「ねぇ、やっぱ――…」
「コタ、」
虎太郎の声を途中で遮断したのは、感情のない人形みたいな蓮の声で。
「遊びは、そのくらいにしとけって」
遊び……?
一瞬、その言葉が引っ掛かったけど、今は深く追求する気にもなれない。
ただ。
虎太郎が太陽なら、蓮は、月って感じ?
こんな真逆の2人の間で。
なるべく踏ん張っていたけれど――…
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