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俺は佐藤と呑みながらも、ずっと携帯ばかり気にしていた。
「おい、何さっきから携帯ばっかり気にしてるんだよ」
神崎と盛り上がっていると思っていた佐藤が急に話しかけてきたかと思うと俺から携帯を浚っていった。
「おい、返せよ」
慌てて取り返そうとする俺に「携帯禁止ー」と俺の手をかわし神崎にパスした。
「神崎も返せよ」
佐藤とは違い返してくれるだろうと思い、手を伸ばし返すように促す。
「暫く預かっとく。佐藤の言う通り今日のお前は気にし過ぎ。サキちゃんと喧嘩したわけじゃないんだろ?」
でも予想とは反し、携帯を俺の手の届かないカウンターの後ろの方に追いやってしまう。
「別に喧嘩はしてないけど、今日佐藤と呑みに行くって言ったら咲穂も容子さんと呑みに行くって言うから」
迎えはいいとは言っていたが、やっぱり心配になってしまう---昨日の事があっただけに。
「さすがに容子ちゃんも結婚したんだし、昔みたいに深呑みはしないだろう」
俺の思いとはあさって答えが神崎から返って来て、思わず笑いながら「そうだな」と話を合わせる。
話は違うが、確かに心配し過ぎなのかもしれない。
別に隠し事をしていたわけじゃないし、後ろめたいことがあるわけじゃない。
咲穂だって分かってくれているはずだし、心配することなんてないんだって思い直し、酒に手を伸ばした。
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