1025人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「あ……」
昼休みに携帯を開くとユキからのメールが一通届いて、その内容に思わず声が漏れる。
せっかく今日は早く帰れそうだったのに、今日に限ってユキが遅くなるらしい。
本当に最近、こんなすれ違いばかりのような気がして自然とため息が漏れてしまった。
「どうした?旦那と喧嘩でもしたのか?」
不意に飛び込んできた言葉に驚き、反射的に携帯を閉じ声の主の方に視線を移す。
「そんなんじゃないわよ。ただ少し仕事で遅くなるっていうメール」
何となく悟にはユキとの間の溝のようなものを感じられたくなくて、馬鹿正直に答えてしまった。
「なんだ……残念」
意味ありげな悟の言葉に私の心臓が小さく跳ね、一端離しかけた視線を戻してしまう。
---目と目が合う。
驚きと戸惑いを滲ませる私に悟は静かに不敵な笑みを見せた。
からかわれた?
恥ずかしさと苛立ちから顔が一気に熱くなってゆくのを感じながら、私は何も言わず悟の横をすり抜け、事務所の方へ足を向ける。
.
最初のコメントを投稿しよう!