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今の私はずっと喉の奥に刺さった棘のような違和感が取れない状態。
悟に振られた事のショックが大きすぎて、現実を受け入れることができずにいたあの頃の私が今もまだ私の中に残っているのだ。
---怖いけど知りたい。
知ってきちんと自分の中で終わらせたい。
少し前なら、こんな風には思えなかっただろうけど、今の私は違う。
ユキと出会い、そして向き合い私は強く変わる事ができた。
だからユキがサユさんと再会し、過去の自分と向き合い長年のトラウマを自ら乗り越えたように、私自身も向き合い乗り越えたいって思った。
「今日なら少しだけだったら時間とれるけど……」
深く息を吐き、速鳴る鼓動を落ち着かせながら絞り出すようにやっとの思いで言葉を口にする。
---不覚にも少しだけ声が震えてしまったけど……
「じゃあ仕事終わったら、あの店で」
立ち尽くす私の顔を覗き込むようにして見ると意味ありげな笑みを見せる。
---胸が小さく跳ねた。
そしてやっぱり言うんじゃなかったって、ほんの少し後悔してしまった。
でも今さら自分が言い出した事を撤回することもできず、しぶしぶ承諾するように頷く。
そんな私に悟は満足げな顔を覗かせると足取り軽く事務所の方へと消えて行ってしまった。
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