迷いと選択

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「おい、今日は飲む気ないから」 相原が店員を呼ぶのに軽く上げた手を阻止するように無理やり下げさせる。 「えー、飲まないんですか?1杯くらい付き合ってくださいよ」 断る俺に相原は不服そうに頬を膨らませ、付き合うようにせがむ。 「今日は相談に乗って欲しいことがあるって言うから来ただけで、別に飲みに来たわけじゃない」 俺が相原の誘いに乗った理由を勘違いされないように、ハッキリと言い切る。 「分かってますよ。でもシラフじゃ言い難いことってあるじゃないですか……」 日頃が勝気なだけに、そんなしおらしい事を言われたら強くは言えなくなってしまう。 ---女ってズルイな。 これが男なら「ふざけるな」と背中でも思いっきり叩いて怒鳴りつけてやるところだが、さすがに女の子相手にソレはできない。 「1杯だけだぞ……」 観念したようにため息混じりに言うと、今の今までしゅんとしていたのが嘘のように目を輝かせ 「はい!すみませーん、生中1つ急いで」 元気に手を上げ店員を呼び止めると、すかさず注文を入れた。 いつの間にか完全に相原のペースに乗せられてしまっていると気づいたときにはすでに遅く、俺はまんまと乗せられてしまった自分自身に呆れながら運ばれてきたビールを飲むしかなかった。 .
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