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俺の言葉が効いたのか、それとも単なる分が悪くなり黙りを決め込んでいるのか、今の今で陽気に振舞っていた相原が口を閉ざし俯きだす。
黙り込まれるとラチが明かず平行線のまま。
俺は呆れたように深いため息をつくと相原によって掴まれていた手をもう片方の手で解くように取り除き、ゆっくりと立ち上がる。
「---佐藤さんだけは嫌です」
店が騒がしいのもあるが、相原自身の声も聞き逃しそうになるくらい小さく俺は自分の耳を疑う。
聞き間違え?
それとも冗談?
俺がそう思えるくらい2人は会社では仲が良いほうだと思う。
現に何度か2人で飲みに行ったり、歩いていたりするのを見たことがあった。
「喧嘩でもしたのか?それとも……」
一瞬、脳裏に横切ったのは最低最悪な事。
まさかサユのことで妬けになって相原に手でも出したんじゃないか、って。
---いや、まさかな……。
さすがに佐藤も会社の女の子にまで手を出すほどバカじゃないだろう。
それに会社での2人を見ていて特にそんな変わった様子も感じられなかったはずだ、とすぐに思い直した。
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