迷いと選択

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悟と付き合っていた頃、何度かアパートでご飯を作って帰りを待っていて欲しいって言われた事があった。 でも私は下手だからとか作れないからという理由で断り続け、一度も作った事がなかったのだ。 いくら結婚したからといって悟にはそんな私が作るようになった風には見えなかったんだと思うし、ましてや私の口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかったんだと思う。 今思えば、当時の私は完全に年上だという事で悟に甘えっぱなしで、"何かをしてもらう"ということはあっても"何かしてあげる"ということが少なかったような気がする。 何だろう---ユキと悟の違いは…… 悟のことは本当に好きだったし、転勤しても不安だったけど大丈夫だって思っていた。 そしてその先には勿論"結婚"の二文字があって…… 何年か後には結婚して私も悟の元へと行くんだと思っていたし、2人の結婚生活を結構リアルに想像もしていた。 それだけに、あの結末は私には耐え難く、辛く悲しすぎるできごとだった。 何度、夢だと思ったことか…… 何度、夢から早く目覚めたいと思ったことか…… 何度…… 寝ても覚めても事実は変わらず、その現実を受け入れることにどれだけ苦しんだか分からないほど、私は悟のことを愛していた。 .
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