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あの頃は悟以上に誰かを想う事なんてできないって思ってた。
ううん……
もう誰かを愛する事なんてできないって思っていた。
それなのにユキと出会い、いつの間にか好きになっていて……
こんなに短い時間でこんなに深く誰かを愛せるんだという事を知った。
こんなことを言ったら駄目なのかもしれないけど、悟への気持ちとユキへの気持ちに大差なんてない。
ただ悟の時とは違い、変に背伸びもしなくてもいいし、置いて行かれないように必死にならなくてもいい。
私がそれなりの年齢になったせいもあるのかもしれないけど、心に余裕が持てる。
ユキとの時間はどこか心穏やかで、心がほっこりするような温かさがある。
出会いが出会いだけに変に格好つける事もなかったし、最初から地でいたのもあるかもしれないけど、ユキとはすごく波長が合っているんだと思う。
「幸せなんだな」
いつの間にか悟の存在も忘れ自分の世界にどっぷりハマってしまっていた。
「うん……」
こんなこと悟と話す日が来るなんて思わなかったし、すごく恥ずかしかったけど自然と顔が綻んでしまう。
嬉しそうにする私を見て悟もどこか嬉しそうに目を細めるのが分かった。
---もしかして私の事を心配してくれていたの?
何も言っていないけど悟の表情を見て不意に思ってしまった。
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