1131人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
正直、ものすごく複雑だった。
いっそ私との思い出なんか奥深くに封印しておいて欲しかったという気持ちと、忘れないでいてくれた嬉しさのような感情が変に入り混じっている。
私の中では結婚も考えたくらいの大恋愛だっただけに、いとも簡単に忘れられていたら"自分"という存在があまりにもちっぽけなような気もするし、さすがに寂しい気もする。
でも、こんな些細な事を……
私さえも忘れていたことを、こんな風にサラリと言われたら内心ドキンとしてしまった。
それが胸の高鳴りなのか、動揺してのものなのかは、すごく微妙なんだけど……
確かにお腹は空いているし、久しぶりに食べたい気はするけど、すぐ帰ると言った手前、食べるに食べれない。
「食べないのか?お腹空いてるだろ?」
目の前に置かれている海老ドリアを食い入るように見つめる私に悟は呆れたように笑う。
「いただきます」
悟の一言と空腹という誘惑に負け、私は軽く手を合わせ食べる事にした。
.
最初のコメントを投稿しよう!