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それぞれの気持ち #2
「---何コレ?」
目に前に突きつけられるようにチラつかされる紙に視線を向けたまま淡々とした口調で問う。
「俺の新しい携帯番号。後で掛けて……」
答えながらその紙を軽く半分に折り、私の手の下に滑り込ませてきた。
「ちょっと、いらないわよ」
さっきのことを学習して、やや声を潜め気味にすかさず断り紙を突き返す。
「じゃあ、今ここで話してもいい?」
私の反応を見るかのように差し出してきた紙切れを少し下げる。
何故か挑戦的に見てくる悟に私は反射的に手に力を込め言葉をのみ込む。
悟から提示された二択は今の状況ではどちらも私には不利なもので、もう受け取るしかなかった。
完全に悟の思惑通りに事を進められているようで面白くなく、私はムスっとした顔で半ば奪い取るように悟の手から紙を奪い取った。
「待ってる。ちゃんと掛けて来いよ」
紙を悔しそうに握り潰すかのように持つ私に悟は満足げに言うと、念を押すように肩を軽く叩いていった。
「最っ低ー……」
悟の卑怯なやり方に腹立たしさしか感じず、いっそこのままゴミ箱にでも捨ててやろうかと思ったが、悟の視線を感じ仕方なくポケットに仕舞いこむしかなかった。
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