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でもすぐに気づく---無意識とはいえ、ユキの居る前でため息をついてしまうなんてって。
今はユキとの2人の時間で楽しいはずなのにため息をついてしまうなんて変に思われてしまう。
何て思ったけど、まるで私のため息につられるかのように、ユキまで小さくため息を洩らしたのに気づく。
---え?
自分もついたくせにユキのは気になってしまう。
「ん?どうした?」
無意識なものだったのか、ユキ自身が全く気づいていない様子で、思わず見入ってしまっていた私に不思議そうに聞き返してきた。
「ううん、何でもない」
本当はすごく気になったけど、聞けなかった。
ううん。聞けなかったというより自分のため息に気づかれなかったという安堵感の方がうわまっていて、聞き逃してしまったと言った方が正しいかもしれない。
「変なヤツ」
答える私にユキは笑い、そして視線をテレビの方へと戻していった。
私はそんなユキの横顔を盗み見しながら、ポケットの中の紙を握りつぶした。
早く帰ることばかり考え悟に連絡するということ自体を忘れてしまっていた。
---大丈夫だよね?
メモを握り潰しながら一抹の不安が何故か消えず、胸がモヤモヤしてきた。
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