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朝、目が覚めると急に咲穂に謝られ驚いた。
一瞬、何の事か分からなかったが、すぐに約束したのに先に寝てしまったことだと分かった。
咲穂は残業で疲れていたんだから気にしなくていいのに……
多分、そう言っても本人は納得しないだろうと、代わりに今晩の夕飯を期待してるからと言うと、さすがの咲穂も渋々頷いてくれた。
料理の腕は俺と大差ないが、俺のために苦手な料理を作ってくれる咲穂を見るのが好きなのだ。
その姿を想像し、今日は早く帰ろうと心に決めた。
でも、せっかくの幸せな余韻も一歩足を会社に踏み入れたと同時に消え去る。
エレベーターの前で、俺を待ってましたとばかり不敵な笑みを浮かべながら相原がこちらを見ていた。
俺は一瞬、足を止めてしまったが、すぐに相原がいるエレベーターの方へと足を進めた。
「おはようございます、各務さん」
エレベーターを待つ俺の横にビタリと並び、皮肉混じりに声をかけてきた。
俺は相原の方をチラリとだけ見て「おはよう」とだけ答えた。
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