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「確かにそうだけど、俺は女がタバコを吸うのって、どうも好きになれない」
今日の佐藤はやっぱりおかしい。
相原がタバコを吸うのは入社した時からずっとで、今まで一度だってそんな事を言ったことなんてなかった。
なのに何で今、佐藤がこのタイミングでそんなことを言い出したのかが分からなかった。
「佐藤さんの好みなんて私には関係ないです。私はちゃんと私自身を見てくれる人と恋愛しますから心配無用です」
相原は佐藤の言葉にも全く動じる様子もなく、余裕の笑みを浮かべ美味しそうにタバコを吸い続ける。
「そうは「あ、各務さんライターありがとうございます。何かココで吸ってても美味しくないんで、先に戻ります」
更に続けようとする佐藤の言葉を遮り、嫌み混じりに言うと軽く一礼し、喫煙室を出て行ってしまった。
ドアが閉まる音と共に一気に空気が重くなる部屋。
何となく佐藤の方を見れずに居ると深いため息と髪を掻きむしるような音が聞こえてくる。
「どうしたんだよ、熱くなって」
佐藤の方は見ずタバコを吹かしながら静かに問う。
「---どうしたんだろうな……」
少しの間を空けてため息の様な笑みが漏らしながらポツリと溢した。
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