946人が本棚に入れています
本棚に追加
*
珍しく咲穂から"何時に帰れる?"のメールに驚きつつ、それにつられるようにいそいそと帰ってきたはいいが、少し様子がおかしい。
「どうかしたのか?」
聞こえていたはずの包丁の音が止まり、ふと見ると何やら難しそうな顔でまな板を見ている。
「ううん、何でもない。ご飯もう出来るからね」
でも俺が尋ねると慌てて止まっていた手をまた動かしだした。
―――やっぱり変だ。
とはいえ誰かに対して怒っているのでも、何かに対してイライラしているのでもない気がする。
ただ、どこか上の空というか何というか……
夕方に着たメールでは、そんな感じはなかったのに帰ってきてみれば、こんなずっと感じ。
ボンヤリしているせいか、さっきからあまり料理も進んでいない気がする。
まぁ、それはどうでもいい……
ただ咲穂のことが心配なのだ。
様子を伺うように遠回しに探るのではなく、ストレートに聞けばいいのかもしれないが、どうも咲穂は聞かれたくはないみたいなのだ。
それでも俺はやっぱり気になるし放ってはおけないから、さっきから微妙なやり取りが繰り返されている。
「お待たせ、ご飯出来たよ」
もう一度、試みてみようと思ったが、咲穂の言葉に俺は出かかった言葉をのみ込まざるを得なかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!