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うつらうつらする記憶の中で微かな人の気配が感じとった。
ああ……
咲穂がお風呂から上がってきたのだと目を閉じたまま頭で理解する。
でも気配は近くに感じるが一向に声を掛けてくる気配がない。
そろそろ目を開けようかと思った矢先、咲穂が隣に座るのを感じ、そして次の瞬間温かく重いものが肩に圧し掛かる。
と同時に鼻をかすめるシャンプーの香りが俺を甘く誘う。
「どうした?」
目はまだ閉じたまま、咲穂の頭に頬を摺り寄せながら肩を抱き寄せる。
咲穂がこんな風に甘えるように寄り添ってくる事は、そうあることではない。
「ううん、何でもない」
そう答えながら咲穂は更に頬を肩に寄せ、体重を俺に預ける。
この様子だと絶対に"何か"あったはずだが、ギリギリのところで決して口を割ろうとはしない。
咲穂の変に頑固なところが厄介で、俺も気になって放っておくことができない。
「さっきから……何でもないわけがないだろう。聞くから話してみろよ」
深いため息とともに俺はずっと閉じてた目を開け、咲穂を自分から引き離し向き合う。
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