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スッキリはしてないだろうが、とりあえず咲穂の中でも一段落したようだった。
俺も内心ホッとしながらテーブルに置きっぱなしにしてあったビールへと手を伸ばすが、また咲穂によってビールを飲むのを遮られてしまう。
話も終え俺から離れていくと思っていたが予想に反し、また俺に体重を預けるように寄り添ってきたのだ。
「ユキ、私にもビールちょうだい」
そして手を伸ばし、少し甘えたような口調でビールをねだる。
どうやら今日の"甘えモード"は、なかなか切れないらしい。
「冷蔵庫の中のやつの方が冷えてるけど」
酔っているわけでもないのに、珍しいなと思いながら可愛いと思いつつ意地悪をしてみる。
「それでいい……」
俺の意地悪に予想通り、少し拗ねたような素振りを見せる咲穂。
「もう殆ど入ってないぞ」
咲穂の反応に、ついニヤけそうになるのを堪え飲みかけのビールを手渡す。
飲み難いはずなのに咲穂は俺に体重を預けたまま、ゆっくりとビールを飲む。
「美味しい」
風呂上りで喉が渇いていたのか、多くはないが残っていた分のビールを一気に流し込むように飲んでしまった。
「お代わり持ってこようか?」
良い飲みっぷりに笑いながら立ち上がろうとするが、止めるように腕を掴まれ、またソファーへと引き戻され
「---いい。それよりも……」
気恥ずかしそうに小さな声で言うと、まるで合図のように俺に抱きついてきた。
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