存在 #2

14/14
前へ
/35ページ
次へ
スッキリはしてないだろうが、とりあえず咲穂の中でも一段落したようだった。 俺も内心ホッとしながらテーブルに置きっぱなしにしてあったビールへと手を伸ばすが、また咲穂によってビールを飲むのを遮られてしまう。 話も終え俺から離れていくと思っていたが予想に反し、また俺に体重を預けるように寄り添ってきたのだ。 「ユキ、私にもビールちょうだい」 そして手を伸ばし、少し甘えたような口調でビールをねだる。 どうやら今日の"甘えモード"は、なかなか切れないらしい。 「冷蔵庫の中のやつの方が冷えてるけど」 酔っているわけでもないのに、珍しいなと思いながら可愛いと思いつつ意地悪をしてみる。 「それでいい……」 俺の意地悪に予想通り、少し拗ねたような素振りを見せる咲穂。 「もう殆ど入ってないぞ」 咲穂の反応に、ついニヤけそうになるのを堪え飲みかけのビールを手渡す。 飲み難いはずなのに咲穂は俺に体重を預けたまま、ゆっくりとビールを飲む。 「美味しい」 風呂上りで喉が渇いていたのか、多くはないが残っていた分のビールを一気に流し込むように飲んでしまった。 「お代わり持ってこようか?」 良い飲みっぷりに笑いながら立ち上がろうとするが、止めるように腕を掴まれ、またソファーへと引き戻され 「---いい。それよりも……」 気恥ずかしそうに小さな声で言うと、まるで合図のように俺に抱きついてきた。 .
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

946人が本棚に入れています
本棚に追加