存在 #2

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その先を聞かなくても容易に想像できた。 ---多分、その彼が元奥さんと一緒に居る場面を目にしてしまったんだと。 「同じ職場なんだから一緒に居てもおかしくないでしょ?気にすることないよ」 当たり障りのない在り来たりな慰め文句を並べてみる。 「単なる私のヤキモチだって分かってますよ。でも2人並んでいる所を見ちゃうと変に自分と比べちゃうんです---何の意味もないのに」 志帆も頭では、ちゃんと理解していて…… でもそれだけじゃない。 頭では分かってはいても心がついて行かない事があることを私自身もよく知っているだけに、見ていて辛い。 「大丈夫、心配ないわよ」 こんな時の慰めの言葉なんて、慰めにもならない事もしっている。 それでも言わずにはいられない…… 言葉で慰めることはできなくても、その心で慰める事ができる。 「ありがとうございます。話を聞いてもらって少し楽になりました」 そう言った志帆の言葉には嘘がない事は顔を見て分かり、少しホッとすることができた。 .
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