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朝。
不覚にも眠れぬ夜を過ごしてしまった俺は寝不足からか、気だるさを覚えていた。
ゆっくりと身体を起こすと背中に何かがどっしりと圧し掛かっているような気だるさと重みを感じ、自然とため息が漏れる。
ものすごく長く、そしてキツイ一夜だった……。
寝たふりをしたものも眠れるわけなく、悶々としていると俺の気持ちなんて知る由もなく風呂上りの咲穂がベッドに入ってきた。
咲穂と一緒に居ることでさえ、やや抵抗を覚えていたのに、咲穂ときたら俺の背中に頬を寄せてきた。
アルコールのせいかベッドに入って間もなくして咲穂は規則正し寝息を立てだす。
俺は咲穂が寝付いたのを確認すると、ゆっくりと寝返りを打ち咲穂の方に身体を向ける。
そして恐る恐る咲穂の寝顔を覗き見ると、悩みひとつない安らかな顔で寝ていた。
ソッと手を伸ばし咲穂の頬に触れてみると寝ているせいか、それともアルコールのせいか、いつもより熱を帯びている。
咲穂の寝顔に愛おしいと思うが、すぐにあのシーンが横切って俺の心を掻き乱し、反射的に手を離れさせた。
愛おしい人が傍に居るのに、それが苦痛で……
でも傍を離れることもできずに俺は眠れぬ夜を過ごしたのだ。
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