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重なる不運 #2
※
悟に連れられ来たのは、昔何度か連れてきてもらったバーだった。
数年経ったというのに私たちの顔を覚え、懐かしそうに声を掛けてくれたマスターの言葉が嬉しかった。
でも何で、この店を選んだんだろう……
前のように変に昔を懐かしむつもりではないかと妙な勘繰りを入れそうになる私の気持ちを悟ってか
「ココ好きなんだけど、向こうに戻ったら来れなくなるから飲み納め。咲穂もずっと来てなかったんだな」
マスターの言葉に私もずっと来ていなかった事に気づいたようだ。
来れるわけがない。
ココは悟が初めて私を飲みに連れてきてくれた場所で、最も思い出深いお店なのだ。
短大を卒業した私にとっては、大人の世界で凄く緊張してドキドキしたのを今でも覚えている。
あの頃の私は1人でバーになんて飲みに行くなんて出来ないくらい子供で……
それなのに今の私は1人で飲みに行くだけでなく酔い潰れ、見ず知らずの男と一夜をともにした挙句結婚までしてしまった。
今思うと神崎さんの所に通うきっかけになったのも、悟への反発心だったのかもしれない。
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