重なる不運 #2

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久しぶりに美味しいお酒だった。 また悟とこんな風に二人で笑いながらお酒を飲む日が来るなんて夢にも思わなかった。 しかも昔話を懐かしみ、ついつい時間を忘れ語り合ってしまった。 ずっと溜めに溜めていたものがスーッと抜けてゆくような…… 悟との確執が少しずつ剥がれてゆくような…… 次第に気持ちがなり、やっと過去の自分から抜け出せたような気がした。 22時を回り、私たちは店を出た。 「今日はありがとう」 タクシーが拾える大通りまで行くと悟は私のためにタクシーを捕まえてくれた。 「え?ありがとうはこっちのセリフだよ。ご馳走様、すごく楽しかった」 私はお礼を言い、悟が停めてくれたタクシーに足を進める。 「咲穂、最後に一度だけ抱きしめさせてくれないか?」 突然の悟の言葉に私は驚き足を止める。 心臓がバクバクと脈打ちだし、動揺のあまり思考回路が停止する。 でもすぐに落ち着きを取り戻し、私はゆっくりと悟の方に向き直った。 .
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