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すごく苛々していた。
自分に……
そして咲穂に……
さっき見てしまったシーンが、ずっと頭から離れない。
目にこびりついた様に焼き付いた、あのシーンが何度も何度も蘇り続ける。
「くそっ!!」
やりどころのない怒りを拳に込め、ソファーを思いっきり殴る。
俺は不甲斐ないことに咲穂と男が抱き合うところを目の当たりにして、その場から逃げ出すように車を飛ばし帰ってきてしまった。
信じたくない……
何かの見間違いだ……
車を飛ばしながら呪文でも唱えるかのように何度も何度も自分に言い聞かせたが、いくら否定し続けても取り除くことができなかった。
――自分を誤魔化すことなんてできるわけなかった。
人伝に訊いたのならまだしも俺は自分の目で咲穂が他の男と抱き合っているのを見てしまったのだ。
しかも咲穂の方から……
確かに言い出したのは男の方かもしれないが、普通に考えて言われたからと言って抱き着くものだろうか。
しかも相手は以前にも咲穂と一緒の所を見ていて、偶然で……
俺の考え過ぎなのかもしれないが、それが妙に引っ掛かっていて余計に頭をモヤモヤさせていたのだった。
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