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どうにか気持ちを落ち着かせようと色々、試みてみた。
タバコを吸ってみたり、冷たい水を一気飲みしてみたりしたが一向に苛立ちもモヤモヤも消えることはなかった。
「はぁーっ」
ソファーに浅く座り、軽く頭を抱えながら深い息を吐く。
そして俺が顔を上げたのとほぼ同時に玄関のカギが開くような物音が耳を掠めた。
――咲穂が帰ってきたんだ。
そう思った瞬間、またさっきの光景が脳裏を横切る。
思い込みは良くない……
とりあえず本人の話を訊いてみなくては、って思っては見たが、今の俺には到底無理なこと。
咲穂の顔を見たら、自分の感情を抑えきる自信なんてなかった。
感情的になっている時に何を話しても上手くいくわけもいかず、余計に拗れてしまうものだと知っていた俺は、まるで逃げるかのように寝室へと移動した。
そして服を着替えることもなく一気にベッドへと潜り込、むと、寝たふりを決め込むために頭まで布団をスッポリと被った。
布団に潜りながら俺は微かな気配も見逃さないように神経を張り詰め、咲穂の気配を探る。
すると暫くして、ソッと寝室のドアが開けられたのが分かった。
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