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咲穂の一言が俺の胸を鋭く突き刺さり、大きく動揺させた。
動揺のあまり寝たふりをしていたのに、思わず飛び起きそうになってしまったが、ちょうど咲穂がベッドから腰を上げたのを感じ、その反動で俺は動きを止めることができた。
ゆっくりと咲穂が離れ、寝室のドアから出て行くのを感じ俺は布団の中で安堵の息を漏らす。
同時に抜ける身体の力と胸に広がってゆくモヤモヤ感。
――ごめんね。
咲穂の言葉がずっと耳の奥に焼き付き頭の中をグルグルと回り続ける。
「どういう意味だよ……」
布団から顔を出し真っ暗な天井を仰ぎ見ながら頭を抱える。
自分に問いながら本当は自分の中で答えが出ていた。
頭に浮かぶのは、あの光景で……
最悪なことに咲穂の言葉と結び付けたら、すべての、つじつまが合ってしまう。
違う……
絶対に違う……
そう強く念じてみたが、どうしても振り切ることのできなかった。
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