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おかしい……
いつもなら私より先に起きていても不思議じゃないユキが今日に限って起きてこない。
――具合でも悪いの?
そういえば昨日も珍しく早くに寝ていた。
ふと思い出し、ユキの様子を見に行こうと寝室の方に足を向けかけた矢先にタイミング良く寝室のドアが開いた。
ドアの向こうから現れたユキは、いつもと変わりない様子で会社支度もすっかり終えていた。
「ユキ……」
気のせいだったのか……
変わらぬユキの姿にホッとしながらユキの傍へと歩み寄る。
でもユキはそんな私の横をすり抜けるようにかわし、冷蔵庫の方へと足を向けた。
――え?
すれ違い様に小さな声で「おはよう」とは言ってくれたが、その声からは感情の欠片も感じられなかった。
ただ言葉として口から出されたもの、にすぎないような気がしてならなかった。
違和感と戸惑いを覚えながら私は恐る恐る振り向きユキを見ると、ユキは冷蔵庫に入れてあったペットボトルの水を勢いよく一気に飲み干していた。
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