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「気にするなよ。俺も咲穂の前で変に格好つけて大人ぶってたところあったし、何より裏切ったのは俺だから……」
自然と落ちてゆく頭をポンと叩かれ、顔を上げると悟は複雑そうに……
バツ悪そうに……
顔をしかめ、それを誤魔化すかのようにお酒を喉に流し込んだ。
「それは……」
確かにそうだと思いながらも全部が全部、悟が悪いとは言い切れない。
今の今まで私はずっと悟の事ばかりを責め、そして恨み自分ばかりが被害者だと思っていた……
--思い込んでいた……。
本当は転勤をきっかけに悟の方から結婚の話を切り出してくれると思っていたのに、言ってくれなくて……
私が悟を想う気持ちほど、悟は私の事なんて想っていないんだって不安で、すごく悲しくて……
だから離れてしまったら終わってしまうって思い、私が半ば強引に悟を説得し着いて行くことにした。
でも両親に反対され、着いて行かなかったからと悟は他の誰かに心変わりしたんだって私は悟だけでなく反対した両親さえも恨んでしまっていた。
--私はすごく子供で、すごく自分勝手だったんだ。
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