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「――でも、やっぱりごめん。私も自分の事しか考えてなかったから……」
私は悟に頭を下げ、謝りの言葉を口にする。
悟は「お互い様だから」と苦笑いを見せ、そして天を仰ぎ見る。
「今なら遠距離でも咲穂と上手くやっていけたのかな?」
ポツリと溢す悟に「どうだろ」と意地悪く返す。
だって今、出会ったところで私にはユキという大切な人がいる。
これで、もしユキが居なかったら……、なんて一瞬思ってけど、それは絶対に嫌だ。
結局のところ私と悟はいつ出会おうが、結ばれることはなかったのだと思った。
「どうだろ?私には今、ユキが居るし難しいかな?」
さすがにストレート言うことは避け、遠回しに断りを入れる。
私の言葉に「やっぱり帰ってくるんじゃなかったかな」と失笑し、冗談めかしく言った。
でもすぐに私を見て笑い
「嘘、来てよかったよ。これで咲穂の事諦められるし、何よりやっと謝ることもできた。―-謝っても許されることじゃないかもしれないけどな」
「もう過ぎたことだから、お互い、この話は終わりにして飲もう」
また徐々に重くなってゆく空気を断ち切るように私はグラスを持ち、一気に飲み干して見せる。
悟は私の飲みっぷりに笑い、そして賛同するようにグラスを軽く上げ、悟も私の真似をするようにお酒を飲み干して見せた。
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