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見えない気持ち #2
マンションに戻り、ユキに寝落ちる前にシャワーをと勧められたが少し酔いを醒ましたいとやんわりと断る。
じゃあ先にと、ユキがシャワーを浴びに行っている隙に私はカバンの中から携帯を取り出し、もう一度着信履歴を確認してみた。
やっぱり着信相手は悟。
以前、はっきり断りを入れて以来、こんな時間に連絡してくることがなかっただけに少し驚いていた。
――もしかして仕事の事?
不意にそう思ったが時間も時間だし、急ぎならまたかけてくるはずだと折り返すことは止めておいた。
頭の中では完全に割り切っているつもりだったが、さっきのように無意識にブレーキがかかってしまうのだ。
何よりやっぱりユキの手前、後ろめたいことが無くても後ろめたい気持ちになってしまう。
それは多分、自分だけが過去を隠し続けているからかもしれない。
本当はユキのように包み隠さずすべて話したら、このモヤモヤも妙な後ろめたさも消えるのだろうけど、タイミングが見つからない……。
タイミング――それすら自分に都合が良い、言い訳を作っているのかもしれない。
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