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隠す必要なんて一つもないのに――隠してしまっている。
ユキがサユさんとの過去を話してくれたように、これを機に私も悟の事を話すべきなのかもしれないとも思う。
その反面、言う必要がない気もしていた。
サユさんの時とは少し事情も違うし、悟は数日で仕事を終え帰ってしまう人で、ユキが変に勘ぐっているのならまだしも、その存在すら知らない。
それをわざわざ言う方が、かえって変に拗れてしまいそうな気もするし、自ら変に波風を立てるような真似は誰だってしたくはない。
――お互い秘密は持たず、包み隠さない関係で居たい……
その気持ちは今もしっかりとあるが、相手のためにも言うべき時と、そうではない時があるような気がする。
本当に相手のため?――胸がチクリと痛む。
何だろう、この嫌な感じは……
後ろめたい気持ちなんて微塵もなかったはずなのに、今はすごく後ろめたい気持ちでいっぱいになってしまっている。
自分の事なのに……
――自分の気持ちが見えない……
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