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あと少し……
あと少しで悟が居なくなる……
そう、まるで自分に言い聞かせるように心の中で唱えてしまっていること気づく。
――駄目だ……
昨日から、ずっとこんな調子で気が滅入ってしまう。
「どうかしたのか?」
無意識に頭を抱え、ため息をつく私の耳に声が飛び込んできた。
――頭痛がしてくる……
「何でもない」
私は立ち上がりながらぶっきら棒に言うと足早に席を離れる。
「どう見ても何でもないって感じじゃないだろ?何を怒ってるんだよ」
そう。
私に声をかけてきたのは悩み種で諸悪の根源の悟だった。
「別に怒ってないし、放っといて」
このようだと昨日の電話に深い意味はなく、完全なる私の勘違いだったようだ。
勝手に勘違いしてユキに嘘をついてしまったのは自分だけど、八つ当たりかもしれないが紛らわしい悟の行動に、苛立ちをおぼえてしまった。
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