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「気にするな。こんな時間にかかってくる電話なんてロクなものじゃない」
咲穂の意識を電話からこちらへ向かせようと、すかさず言う俺に「そうだね」と苦笑いを漏らす。
鳴り続ける着信音を気にすることなく、久しぶりの咲穂との甘い時間に酔いしれ、堪能する。
「ユキ……」
時々、咲穂が漏らすように口にする俺の名前。
耳元に感じる甘く熱い吐息。
徐々に熱を帯びてくる咲穂の身体。
そのすべてが俺を欲情させ、夢中にさせてゆく。
「――ユキっ」
遠慮なく行為を進めてゆく俺に咲穂は何かを訴えるかのように止めにかかる。
今更、急ブレーキをかけられても止まることなんてできない感情。
「何?」
まだ電話を気にしているのかと思ったが、完全にスイッチが入ってしまった俺にとって咲穂の言動は邪魔でしかなく、ついぶっきら棒に訊き返し様子を伺うと
「――ちょっとフローリングが痛いかも……」
ちょっと恥ずかしそうに、そして躊躇いがちに訴えてきた。
「悪い」
咲穂の言葉に我に返り謝ると少し身体をずらし、咲穂にかかっていた俺の体重を軽減する。
つい夢中になりすぎベッドのスプリングがないにもかかわらず、思いっきり咲穂に体重を乗せてしまっていた。
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