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「多分、大した用じゃないよ」
予想外なユキの申し出に戸惑い駄目と思いながらも、その場しのぎの言葉を口にしてしまった。
「大した用もないのに普通、こんな時間に電話してくるのか?」
ユキの顔が……、目が……、すごく怖い。
さっきまでの甘い空気が一変してピリピリとした刺々しいものへと変わっていく。
明らかに声に苛立ちを感じ、私は言葉に詰まる。
「それは……」
ー―どうしよう……
今日、みんなで飲みに行っているから志帆だろうと思っていたのに、まさか悟からだと思ってもいなかった。
「あ!今日、みんなで飲みに行っているから酔っぱらってるのかも」
口を開けば開くほど言い訳がましくなってしまう気がしたが、私自身心当たりがない電話だけに他に言いようがなかった。
「酔っぱらって咲穂に電話を掛けるなんて、やっぱりあいつは咲穂に未練があるんじゃないか!?」
ユキの口調が、まるで私を責め立てるように荒だたしさを増し、いつのまにか掴まれていた腕にはユキの指が深く食い込んでいた。
「そんなのあるわけないでしょ!?悟とは、もうとっくに終わってるんだから!それに悟に振られたのは私の方なんだから!!」
ここまで言うつもりなんてなかったのに、ユキの態度につい溜めに溜めていた言葉を全部吐き出してしまった。
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